認定司法書士の締結した和解契約に関する最高裁平成29年7月24日判決について

以前の記事でも触れたように、司法書士が債務整理の分野に進出したことに伴い、その権限の範囲について問題が生じたことがあった。

その記事には、

そうすると、140万円を超える請求権の発生する事案で司法書士が関与して行った和解は、たとえ形式的には本人にハンコを押させたからといっても無効とされる余地が出て来るような気もします。

さあ、そうなると、和解無効を理由として紛争が蒸し返されることはあり得るんじゃないでしょうか。貸金業者はたまったもんではありません。

と書いているが1、締結した和解契約が無効になるかどうかという点は、必ずしもはっきりしていないところであった。

 

認定司法書士による和解契約の効力

さて、認定司法書士が締結した和解契約の有効性について、最高裁判所が判決を出した。

平成29年7月24日 第一小法廷判決2
認定司法書士が委任者を代理して裁判外の和解契約を締結することが同条3に違反する場合であっても、当該和解契約は、その内容及び締結に至る経緯等に照らし、公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情がない限り、無効とはならないと解するのが相当である。

ということで、認定司法書士が締結した権限外の和解契約を有効としている。

これは、計算上約330万の過払いがあったはずだが、認定司法書士が200万円で和解したという事案である。

 

判決の評価

本来出来ない業務に関与している認定司法書士が有効な契約をできるか、という点に関して、最高裁は、特段の事情がない限り無効とはならないという判断をした。

しかし、弁護士法72条違反の法律行為は、公序良俗に反して無効であるとされる4。無効な契約に基づく行為は、どこまで行っても無効ではないのだろうか。にもかかわらず、有効になる場合があるというのが、今回の判決の内容である。

単純に考えれば、筋が通ってない。

確かに、単純に和解無効とすると法的安定性は損なうのだが、貸金業者の方だって認定司法書士の関与について見て見ぬふりをしていたはずである。代理人が司法書士なら140万まで!というのは法令上の制限なのであるから、分かっていない訳がない。和解無効のリスクがあることは承知していて当然である。

そこで、どうも釈然としない。

実際上は、公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情を主張して争う、ということにはなるのだろう。

 

判決の影響

この判決で救われたのは貸金業者ということになる。

過去に認定司法書士が関与した権限外の和解契約について、蒸し返されて無効主張されても負ける可能性は小さくなるだろう。貸金業者はほっとしているはずである。

一方、権限外の金額となる和解に関与した認定司法書士の責任は、どうであろうか。

今回の判決では「当該認定司法書士は委任者から報酬を得ることもできないこととなる」などと言及している。そうすると、権限外の業務に報酬請求権がないことのお墨付きを与えたような感もあり、債務整理の報酬を返還しろという請求は生じそうである。実際にそこまで踏み切る人がどれ程いるのか分からないが。

また、出来ることと出来ないことをしっかり説明しないと、説明義務違反を問われる5

本来請求できたはずの額との差額まで損害賠償請求されるかどうかは、事案にもよるところであろう6

 

まとめ

以上のとおりで、以前の記事に書いたのと同様、140万円超の和解に関与した認定司法書士は依然として責任を問われるおそれが続いているので、この問題、どう収束することになるのか気になるところではある。

 

 



  1. 「司法書士の代理権に関する最高裁平成28年6月27日判決の衝撃」http://www.iwata-lawoffice.com/wp/?p=2946 

  2. (PDF)http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/944/086944_hanrei.pdf 

  3. 弁護士法72条。 

  4. 最高裁判所昭和38年6月13日第一小法廷判決(PDF)http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/792/053792_hanrei.pdf 

  5. 大阪高裁平成26年5月29日判決(最高裁平成28年6月27日判決の原審)では、慰謝料として1人当たり10万円を認容している。 

  6. 前掲大阪高裁判決では、回収見込額等の事情について必要な説明がなされていたことを理由として、この点の請求は認められていない。