クレサラ問題リターンズ

過去には、クレサラ問題で大変な時代もあったわけで、昔の記事でも次のように書いたことがあった1

貸金業法の改正は社会に劇的な変化をもたらしました。これは、大変な苦労をしながら消費者問題に取り組んできた弁護士たちの活動の大きな成果であると評価して良いと思います。弁護士が束になって本気で頑張ると世の中が変わることもある、ということをこの件では実感しています。

 

自己破産件数が増加に転じる

ところがどっこい、である。

今年の4月3日に、朝日新聞が次のように報じていた2

個人による自己破産の申立件数が昨年、13年ぶりに前年を上回った。多重債務問題で消費者金融への規制が強化されて減少が続いていたが、最近は規制対象外の銀行カードローンが急増。自己破産増加の背景にはこうしたローンの拡大があるとの指摘が出ている 。

 

金融庁の動き

社会の変化は本当に素早いものである。

さらに、8月24日の北海道新聞でも、次のように報じていた3

金融庁が、過剰な貸し付けが問題となっている銀行カードローンに関し、9月にも特別調査を実施する方針であることが23日分かった。全国銀行協会(全銀協)は3月に自主規制策をまとめたが融資残高は増え続け、国会や法曹界から多重債務者の増加を助長していると批判が出ている。金融庁は大手銀行を中心に適切に融資されているか調べ、実態を把握する。

さすがに、金融庁も黙ってられなくなったということなのだろうか。

銀行のカードローンは、銀行は看板とカネを出しているだけで、面倒なことは保証委託先の消費者金融に丸投げしている感もある。

そこで、テキトーな融資をしている事案もぽろぽろ出て来るような気がする。しっかり調査をしてほしいと思っている。

 

総量規制の成果

債務整理の実情はどうなっただろうか。

総量規制の成果として、過剰な借り入れをしている人は減ったのは実感する。昔は6社合計300万の借り入れをしていた、といった人が少なくなかった。

今では、そのような事案はあまり見かけない。個人の債務整理の案件でも、負債総額が100万前後に落ち着いているケースの方が多い印象である。

負債総額が100万円であっても、数社から借りて平均が年利18%だとすれば、月あたり1万5000円の金利の負担である。これ以外に元本も返さなければならないのだから、そう簡単なことではない。負債総額が圧縮されているとしても、支払が難しくなれば仕方がないから、債務整理をすることになる。

 

低賃金の影響

一方で、このような借り入れをしている人の給料が最低賃金付近に張り付いていることは、割と普通に見かける(=月20万円も行かない)。

人間、生きていれば何かとお金は掛かるのであり、切りつめるにも限界がある。

債務整理の方針を決める上で、近時、しばしばネックとなるのは、基本給が低いということのみならず、給料が上がる見込みはないとか、ボーナスは元々ないとかいった事情である。つまり、低賃金ぶりが著しいのである。

そうすると、負債総額が圧縮されている傾向にあったところで、自己破産を選択せざるを得ない。

 

浮かんでくる構図

ということで、私から見える構図は、

銀行
カネ余る→企業の貸出先ない→消費者に高金利で貸付→保証委託先から回収

消費者
賃金増えない→借金に依存→経済的破綻

というものである。これは一歩間違ったら革命前夜みたいな状態じゃないのか、という気がしている。冗談ではない。

もちろん、円安とか株高のメリットを享受できる向きには今の経済情勢は良好に見えるのであろう。それはそれで、大変結構なことだと思う。

しかし、残念ながら当職にはそのような世界は視界に入ってこない。むしろ、個人的には、今の経済政策ヤバくないかと感じている。お前の偏見に過ぎないとの批判はありうるだろうが、そのような実感である。

 

まとめ

今の私が出来るとすれば、相談に来たお客さんに、債務整理の手ほどきをしてお金の問題の悩みを和らげるくらいのことしかない。

お金の悩みを全面的に解決します!とまでは言いにくいのは、弁護士が債務整理をすることで債務をカットできても、お客さんが収入を増やす途を示すことまではできないからである。

仮に、生まれ変わることが出来るのであれば、貧困を撲滅する経済理論を開発するために身を捧げられないだろうかという思いつきが出てくるくらいには、いささか悔しい思いを持っている。

 

 



  1. 「行政活動とのかかわり(4)貸金業関係連絡会」/http://www.iwata-lawoffice.com/wp/?p=2187 

  2. http://www.asahi.com/articles/DA3S12874177.html 

  3. https://www.hokkaido-np.co.jp/article/127475