依頼者見舞金制度について

8月6日の読売新聞が次のような記事を報じています。

弁護士が依頼者らの財産を着服する不正が相次いでいることを受け、日本弁護士連合会が救済措置として導入を検討していた「依頼者保護給付金制度」の内容が固まった。

着服した弁護士が有罪判決や懲戒処分を受けた場合、見舞金として被害者1人当たり500万円を上限に支給する。早ければ来年4月にも導入される。

読売新聞の調査では、業務上横領罪や詐欺罪で起訴された弁護士は、2013年1月~15年11月の約3年で23人に上り、被害総額は20億円を超えた。成年後見人として管理していた認知症高齢者の財産や、交通事故の賠償金を着服したケースが目立っている。

日弁連が不祥事への対策を急ぐのは当然ではありますが、いつの間にそんな内容が固まったのか、という感を持っています。

 

制度の疑問点

依頼者の金を横領した弁護士は控え目に言って万死に値するものですが、そうであってもこの制度は理屈が成り立っていません。そう考えるのは至って基本的な理由によります。

まず、故意犯まで対象とする制度は構造的にモラルハザードを強く誘発します。

そして、この制度は日弁連に法的責任がなくても見舞金を出すものと位置づけられていますが、法的責任がないという前提なら本質的には金銭を支払う義務はないので、筋が通っていません。

 

対案の提案

依頼者保護という目的は極めて重要ですので、反対するだけではなく、この件については有力かつ実効性のある対案を示します。

何で第三者預託の制度を設計しないんでしょうか。うまく設計すれば横領を防げる上に、見舞金の支払よりもコストが少なくて済む可能性もあるはずです1

また、高額の資産預かりを要するような後見事案については、複数選任してもらうことを原則として相互監視させるという方法もあるでしょう。

 

全会的な議論を

このような制度の導入が持ち出されるのも、同様の制度を既に導入している司法書士業界への対抗策という面もあるのでしょうが、追従するだけでは安直に過ぎます。もっと根本的に不祥事の問題を考えた方が良さそうです。

この機会に本質的な議論が全会的になされることを望んでいます。

 

 



  1. 例えば、二弁フロンティア2015年10月号の「マルセイユ弁護士会訪問記」という記事に、フランスにおける弁護士預り金の管理制度(カルパ)に関する紹介がある(PDF)http://niben.jp/niben/books/frontier/frontier201510/2015_NO10_38.pdf